1/16ページ目 「話し掛けてくる奴がいたら詐欺だと思え。ぶつかってくる奴がいたらスリだと思え。飲み物を渡されたら薬だと思え。食べ物を貰えば毒だと思え。」 「優しくしてくる奴には裏がある。まずは疑え、腹を探れ。絶対に騙されるな。信じた瞬間、あんたは死ぬ。」 それが、オレを育ててくれた男が教えてくれた此処での生き方だった。 此処、Z地区では犯罪が日常茶飯に起こる無法地帯。 女は身売り、男は窃盗。 生きるためには何でもやらないと、誰かに利用され、そこで終わりだ。 『・・・よしっ今日も一仕事頑張るか!』 【眼帯黒ポリスの腹が読めない】 「離せ!!くそおっ!」 『警察だ、大人しくしろ。』 「細いくせに、全然振りほどけねぇ!!!」 『(細いは余計だっつーの・・・)』 更にきつく締め上げると、男の声が大きくなる。 「いだだ!!痛いって!!待った待った!!!」 『・・・』 「へっ、へへ・・・まぁ待てよ。いい話がある。」 男が媚びたように笑った。 「なぁ、綺麗な顔のお兄さん。アンタ、噂のポリ公だろ?」 『なんの話だ、口を閉じろ。連行する。』 「待ってくれよ!その腕章の隣に控えめにつけられたバツのマーク・・・知ってるぜ?アンタ最近賄賂を受け取ったら見逃してくれるっていうポリ公だろ?なぁ、俺は払えるぜ?なあ!」 『・・・』 腕の力を緩めるが、男が動き出した直前にもう一度痛みを伴う程度の締め上げを強めた。 「いだだだだだ!!!」 『騙されるか、詐欺常習犯。嘘はお前の十八番だろ?』 「嘘じゃねーよ!ケツ!ケツのポケットに現金あるから!!」 『・・・』 男の尻ポケットを確認して、そこから抜き取った金を胸ポケットに入れる。 「な?」 『・・・今回だけだ。』 「恩に切るぜ!!」 慌てて走り去った男の後ろ姿を見送る。 『・・・』 『(ふっ、ははは!やったあ! アイツすげぇ金持ってんじゃん!!)』 掠めとった札束は、先程の男が隠し持っていた襟、靴、袖、ベルトに至るまで、全てを貰った。 男はそれに気が付いていないようだったが、まさか警官であるオレが盗んだとは思わないだろう。 『(これだけありゃあ暫くは食っていけるな。よし、帰るか。)』 踵をかえしたその時、引き金を引く僅かな音が聞こえて咄嗟に胸元の拳銃に手をかけた。しかし・・・ 「ゆっくりと手を挙げて」 『・・・』 「少しでも怪しい動きをすれば撃つ。あぁ、その拳銃を出しても無駄だよ?それが偽物だと、僕は知ってる。」 『・・・』 諦めて手を上げて降参すると、その声が振り向けと命じてきた。ゆっくりと向きを変え、銃口を向けている大男の顔を確認する。 そこには、藍色の髪をした黒ずくめの警官が立っていた。 右目には黒い眼帯をしている奇妙な男は、体格のいい図体に整った端正な顔立ちをしていた。 『(警官・・・本物か。ポリスっていうより、モデルみたいなやつだな・・・)』 眼帯ポリス「君だね?最近ここらで警官に成りすまし、賄賂を受け取っているというのは。」 『(この格好じゃ言い訳も出来ない・・・か。)』 眼帯ポリス「現行犯逮捕だ。さっきの男もその通路の先で待ち構えている僕の仲間が、今捕まえているはずだよ。」 『通路の先?ははっ!お巡りさん、ここら初めて?』 眼帯ポリス「?」 『きっとお巡りさんのお仲間は、今頃出てこない詐欺常習犯を待ち続けているんだろうな。』 眼帯ポリス「どういうことだ。」 その時、オレ達の間に小さな影が飛び出し、眼帯ポリスに体当たりした。予想外の出現に、警官の注意が逸れる。その隙にオレも真逆へ飛び出した。 眼帯ポリス「っ!?待て!!」 『やーだよ!』 眼帯ポリス「ちっ!一体何処から・・・!」 『そんなことより、お巡りさん。持ち物確認した方がいいんじゃないか?』 眼帯ポリス「え?」 『胸ポケットに入れてたもん、さっきの餓鬼が持ってったよ。』 驚いて胸ポケットに手を当てた警官を見て、オレはざまぁみろと嘲笑う。オレを捕まえようとした天罰だ!なんて、思ったのに。そいつは悔しそうな顔を通り越して、なんと真っ青になったのだった。 眼帯ポリス「家族の写真が!もう、あれしか残っていなかったのに・・・」 『・・・』 余程大事なものだったのだろう。それが、彼の事を全く知らないオレですら伝わってしまうほど、そいつは茫然と、途方に暮れるように掠れた声で呟いた。 『(・・・いや、オレには関係ない。)』 そんな奴の表情から無理矢理視線を逸らしたオレは、急ぎその場を潜り抜けたのだった。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
w友達に教えるw [編集] 無料ホームページ作成は@peps! |