1/32ページ目 第01話〇朝 朝起きるのは得意な方で、家を出る時間はいつも同じ。だからなのか、毎日同じ赤信号で止まる。でも、待つのが苦だと思ったことはない。それは初め朝の澄んだ空気が好きだからとか、そういう理由だったんだけど・・・ 光忠「おはよう」 振り返ると、朝陽に照らされた長身の男が立っていた。 『おはよう、光忠くん。』 私の言葉に彼が甘い笑みを浮かべる。自然と繋がれた手、その暖かさに鼓動が少し跳ねた。 『今日も赤信号ですね』 光忠「うん、今日も君とのこの時間から1日を始められるなんて嬉しいな。」 『立ち止まる事がですか?』 光忠「信号が赤の分だけ、君とこうして仕事前に手を繋げる時間が増えるからね。」 彼の言葉に、視線を繋がれた手に向けた。大きな彼の手が包み込むように重なり、長い指が私の指に絡められている。 『(だから私も、この時間が以前よりも好きだと思えるのかな?)』 ちょっとばかりニギニギと繋がれた彼の手を握りしめてみれば、お返しとばかりに彼もギュッとしてくれる。 『私も・・・この時間が好き。』 つい口元が緩む。彼も同じ気持ちで居てくれると思うと、心がポカポカと暖かくなるような気がして彼を見上げた。 すると、何故か彼は口元を押さえている。 『寒いですか?今日は冷えますもんね。』 光忠「そ、そうだね・・・」 『光忠くんは、いつも手が暖かくて羨ましいです。』 光忠「そこは僕がこうして君を暖めるから。」 『ホント?なら、冷たいままでいいや。』 光忠「っ」 『?』 光忠「・・・」 『(光忠くん耳赤いな・・・そんなに寒いのかな。会社についたら手を暖めてくれたお礼にホットコーヒー淹れてあげよう)』 光忠「(僕の彼女、今日もほんと可愛い・・・!!)」 【ふたりで並ぶ赤色時間】 私達の勤めている会社は、とても個性的な社長が自らスカウトした人材しか勤めておらず、職種もバラバラ。各色んなプロが集められ、依頼があれば動く形だ。とはいえ何も依頼が来ていない時は?といえば、パソコンでの入力作業や細かい素材作りなど、それぞれ空いた時間で作る仕事を受け持っている。 私は動画制作関係を担当し、光忠くん・・・長船光忠くんは雑誌やパンフ関係の人。本来なら同じフロアにいる筈のない私達。でも我が社では当たり前の様に隣の席で全く違う仕事をしていて、違う方面の仲間と交流を深めていることで新しい着眼点と発想力を強みにしている。 いつの頃だったか、私達は互いに相手を意識しはじめ、彼からの告白で恋人になったことは、まだ記憶に新しい。 光忠「コーヒーありがとう♪じゃあお昼に」 『うん、今日も頑張ろう』 繋いでいた手を離し、それぞれの席へと向かう。社員カードを首に通していたら肩を叩かれた。 乙女子「おはよ〜、朝からラブラブ出勤とか羨ましすぎる〜!」 ふー子「おはようございます、夢子。」 獣子「はよ」 『おはよう、皆』 獣子「・・・」 『?』 獣子「今の心境を一言。」 『お仕事がんばるぞ〜・・・?』 乙女子「あんな羨ましい通勤方法過ごしてなんで出てくる言葉が仕事なのぉ!!」 ふー子「夢子、では長船さんとの朝について一言。」 『・・・手が』 「「「 手が? 」」」 『あっ暖かいです・・・』 獣子「あんた冷え性だもんね〜」 乙女子「うんうん本当に。ってそうじゃないでしょ〜!?」 ふー子「相変わらずですね〜。普通は惚気のひとつくらい絶対溢すのに、全くですから〜。」 獣子「夢子がこんなだから、長船くんガチファンの女性陣も渋々黙ってる所あるよね〜」 ふー子「お似合いですよ、夢子。」 『あっありがとう』 「「「 ・・・ 」」」 乙女子「今の心理状態を一言。」 『てっ・・・照れてます・・・!』 はわわっと頬と目元を両手で包み込むように抑えれば、三人から無言の視線が突き刺さる。 乙女子「ん・・・んん。やっぱり分からん。結構付き合い長いはずだけど、いまだに夢子ちゃんの表情から感情を汲み取れない。」 獣子「今日も表情筋死んでるわね〜」 ふー子「そんな所がとっても可愛いですよ!ええ!!」 乙女子「どう見ても眩しくて目を抑えた人にしか見えない・・・」 鶴丸「きみたち時間だぞ〜。席に着け〜?」 乙女子「きゃあ♪社長♪♪おはようございます♪」 鶴丸「おはよう乙女子。今日も調子が良さそうだなぁ。期待してるぞ?」 乙女子「!!!(トスッ)」←心臓にハートの矢が刺さった音 獣子「乙女子〜?ときめいてないで早く席着け〜?」 乙女子「聞いた〜!?期待してるぞ?だってキャァアア〜♪♪」 ふー子「いいから早く」 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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