夢小説B

【How are you】2
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STORY 22 出発


how are you


『えっ!?まだ審神者になれないーー!??』
大声が耳に響いたのだろう、長義さんが眉を潜めて耳を擦った。
長義「彼らの呪印を改めて調べたところ、解除するのに段階を踏まなければならないらしい。」
『それとすぐ審神者になれないこととなんの関係が?』
長義「前任と関係が深いとはいえ、本丸譲渡には再契約の儀式を行わなければならない。だが呪印のせいで彼らは再契約するのが難しい状態だ。」
『なら三人を残して他の皆と先に契約するってのは可能なんです?』
長義「可能だが・・・驚いたな、それを望むのか?」
『いや、嫌ですけど』
長義「何故聞いた・・・!!」
『なんだか肩透かし・・・親や友達と涙のお別れをして、審神者になる気満々だったのに!!』
長義「だが呪印の解除に、体に相当な負担が掛かる。審神者にはならずとも、結局は現世へ戻っている暇はない。」
『・・・それで、私は何をすればいいですか?』

長義「まずは具体的な説明をしよう。解除だの呪印だのと言ったが・・・そもそも主から掛けられた術は呪いではない。制限の術だ。その刻んだ部分の機能低下、そして術を掛けた者へ歯向かえない縛り。その術者が術を解かずに亡くなった為、それは解けない呪いとなった。」
『解けない?』
長義「そう。だから、それを無理矢理全てを請け負うことによって再契約を強引に進める。」
『理解しました。ひとつ質問!』
長義「なにかな」
『出来れば三人同時に解放してあげたい。それは可能です?』
長義「君への負担が増えるが」
『かまいません』
長義「段階の話はしたな、最初は政府の術者が鍵を外してくれる。次は君が術に触れることが必要だ。その時に何が起こるかは不明である。そこまでを君の状態を見ながら進め、最後に三振り同時に術の移行を行うならば可能だ。」
『ならそれを希望します。』
長義「彼らにも伝えておくように。それと、誰から術に触れるかもな。」
『わかりました』

・・・

光忠「加州くんからがいい」
秋田「はい」
加州「えっ!俺?」
秋田「術に触れ何かが軽減されるのかもしれませんから。それなら心臓に制限をかけられている加州さんが一番に見てもらうべきです。」
加州「秋田の目の方が・・・」
秋田「僕は後で構いません」
『それじゃあ加州さん、向こうで政府の医療班の方々が待っていますから、部屋に行きましょう。』
加州「ん〜・・・分かった。」

医療班「では始めます。彼の呪印が光だしたら手をかざしてください。」
『かざすだけですか?』
医療班「はい。痛みは無い筈ですが、何が起こるかは未知です。心の準備だけはしておいてください。」
『はっはい・・・』
加州「緊張しすぎ」
『加州さんはいつも通りですね』
加州「そりゃあね・・・よっと」
『うわぁぁああああ!!どうして服脱ぐんですかぁああ!!?』
加州「は?いや、俺の呪印心臓だし」
『あっそうでした』
加州(じと〜っ)
『コホンっ・・・さっはじめますか。』
加州「大丈夫かなぁ、不安になってきた。」
『そう言わないで下さいよ。頑張りますから!』

政府の方々が何かの呪文の様なものを唱え出した。次第に加州さんの胸元から呪印が浮き出し、ぽうっと光を放つ。
『・・・よし!いざ参らん!』
加州「どんな掛け声!」
『(加州さん、ツッコミ上手だな)』
かざした手に、加州さんから浮き出した呪印が吸い込まれるように触れた。その瞬間光が体を包むような感覚と共に、意識が薄れていったのだった。

・・・


「またご指名ですって」
「得でいいわねぇ元から可愛いってのは」

「・・・」
「何見てるんだい」
「姉さん、可愛いって得なの?」
「あんたはそんなこと気にしなくていいんだよ。父さんの後を継ぐことだけを考えな。それがあんたの夢だろ?」
「・・・どうして得なんだろう」
「全然聞いてないねぇこの子は。はぁ〜・・・可愛いと客がつくだろう。それでさ。」
「客?」
「日銭をそれで稼いでんだよ、あたしらみたいな女じゃそれくらいしか出来ない。でも・・・」
「でも?」
「はっ!得でいいなんて横目で羨ましがる女なんかに誰が食いつくってのさ!可愛く着飾るんだよ。愛して欲しけりゃ自分で可愛くするのさ!見てみな?あたしはそれで男どもを骨抜きにしてきたんだからねぇ」
「うん、姉さんは格好いいよ!」
「だから可愛いっていいな!」

「おい清光って刀工はいるかい?」
「父さん!お客さん!!」
「はいはい、御入り用ですかい」
「ほぉ、それ。見せてくれるか」
「へぃ」
「・・・これは、んん・・・加州清光、いい刀だ。これを貰おう。」
「まいどあり」

(これは・・・加州さんの記憶?)
どうやら、彼が刀だった時の記憶のようだ。そう理解した瞬間、場面が切り替わった。

「えっあの沖田総司の刀なの?凄い」
加州「ぁ・・・まあ・・・ね。」
「初期刀適当に選んじゃったけど、結構有名な刀だったのね」
加州「ん、扱いずらいけど性能はいいから、愛してね、主。」

場面がまた切り替わる。
「新しい刀が見つかったんだって。新撰組の刀らしいわ。加州の知り合いなんじゃない?」
加州「覚えてくれてたの?俺ってば愛されてるー♪」
「新撰組なら流石にね・・・他はよく分からないけど」
加州「・・・うん、主。仲間が増えて、主の本丸が賑わうといいね。」

加州さんと会話していた女の人は、彼の主・・・審神者だ。最初から、乗り気でないことが伺える。そんな彼女の言葉に、時々彼は表情を固まらせている。だがそれを彼女は気付いていないらしい。彼の方も飄々として感情が読みにくいからかもしれない。

加州「・・・」
光忠「加州くん?どうしたんだい、そんな暗い場所でぼーっとして。」
加州「燭台切・・・」
光忠「何か悩み事?僕で良ければ聞こうか?」
加州「何でもないよ。燭台切はこんな時間まで何してたの?」
光忠「僕は厨で明日の仕込みをしていたんだ。」
加州「あぁ料理が好きなんだっけ」
光忠「伊達政宗公の影響でね」
加州「・・・元主、かぁ」
光忠「加州くんは・・・元主の話を全然しないよね。どうしてなのか、聞いてもいいかな」
加州「話せることはないよ。あまり・・・覚えてないからね」
光忠「君は沖田総司くんの影響を強く受け継いだ刀だと思っていたんだけど・・・違うのかい?」
加州「あー・・・そうね、影響は受けてると思うよ。」
光忠「・・・悩んでいるのは、その事?」
加州「どうしたの?今日はやけに絡んでくるね。」
光忠「ずっと気になっていたんだ。君は主から沖田総司の名前が出る度に表情が凍り付くから。」
加州「っ・・・やだなぁ!何言ってんの?そんな訳ないでしょ」
光忠「ならいいんだけど・・・いつでも話聞くから。加州くんの好物はなんだったかなぁ。ちゃんと摘まみに持っていくからいつでも誘ってね。」

また場面が変わる。
加州「えっ?今何ていった?」
同田貫「だから、俺は同田貫と銘された刀の集合体だ。物語がどうのと興味がないね。ただ武器として斬れりゃあいいって話だ。」
加州「集合体・・・」
同田貫「っておい、大丈夫か?顔色が悪いが・・・」
加州「同田貫、記憶は?記憶はどうなってる?」
同田貫「は?記憶?そうだなぁ、ぼんやりと覚えてたり覚えてなかったり。」
加州「自分のことなのに自分じゃないみたいな?」
同田貫「だな。いくつも合わさってるんだから当然そうなる。」

加州「・・・」
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