夢小説B

【呼び声❅前編〜人外主が、右目に氷の華を持つ僕を呼んでいる〜】
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「燭台切様・・・燭台切様・・・!」

僕を呼ぶ声がする。

それはよく知った声な気もするし、全然聞いたことの無い声な気もする・・・透き通った綺麗な声で、でも何処か儚さがあって。耳に心地いい、静かな声だった。

記憶を辿ってみるけれど、その声を聞いたことがあるような気がするのに、誰だったのかは思い出せない。いや、会ったことなど無かったかもしれない。

ただ分かるのは、僕はその声が大好きだってこと。あの声で名を呼ばれるのが、とても嬉しく感じるってこと・・・。



・・・



燭台切「・・・?」

その声に呼ばれた気がして目を開けると、そこにいたのは汚れた布を目深に被った金髪の青年だった。

山姥切「俺は主の初期刀、山姥切国広だ。あんたの名は?」

燭台切「僕は燭台切光忠。」

山姥切「太刀、長船派の祖か・・・」

燭台切「・・・?」

キョロキョロと辺りに視線を送っていると、彼は首を傾げた。

山姥切「どうした。もしや、状況が飲み込めていないのか?」

燭台切「いや、歴史を守るため、僕ら刀の付喪神は歴史塑行軍と戦うべく審神者に顕現された。何故か御霊がこの寄り代に降りた時に把握したよ。」

山姥切「なら・・・」

燭台切「主の姿が見えないけど・・・僕を呼んだ審神者は何処?どうして此処にいないんだい?」

山姥切「あぁ、主なら部屋へ戻った。自身の容姿を気にして、特に新入りの前には出たがらない。」

燭台切「容姿?」

山姥切「此処で生活していれば、いつかは見ることになるだろう。」

燭台切「・・・声。声が聞こえたんだ。此処へ呼ばれる時、僕の名を呼ぶ声がした。」

山姥切「声?」

燭台切「皆そうなのかい?その声に導かれて来たら、此処へ辿り着いたんだ。あれは主の声かと思ったんだけど。」

山姥切「そんな話は聞いたことがないな。呼ばれた気がするのは皆共通する感覚だが、声が聞こえたと言ったのはあんたが初めてだ。それに、その声は主のものでは無いだろう。なぜなら・・・」

山姥切「俺たちの主は、声が出ない。」





【呼び声〜人外主が、右目に氷の華を持つ僕を呼んでいる〜】

第01話❅顕現





僕を顕現した主は、声が出ないらしい。しかも人ではない見た目を気にして、その姿を見せない。主を見た事のある仲間の話からは、確かに人ではない・・・いや人に入るのか?と、曖昧な事を話していた。誰かは見慣れた姿形をしていると、また違う誰かは予想外な姿過ぎて一瞬目眩がしたと。

ただ、皆が口を揃えて言うのは。「気にしなくてもいい。だから、僕らの前にもっと出てきて欲しい。」と、願っていることだった。

主の力によって現世へ人の体を貰って動けるようになった僕らは、もっとその主と共に在りたい・・・と。人間の様に、共に生活したいと望んだ。

刀の付喪神であるはずなのに、僕らは不思議となんの違和感も無く人の様な感情を持ち、人の生活を送っている。

その事に疑問も持たずに過ごして二ヶ月経ったある日の事だった。

薬研「燭台切・・・その右目、どうしたんだ?」

ギョっとした様子の薬研くんが、僕の右目を見て目を丸くしたんだ。
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