夢小説B

【僕らの主がネズミになりまして】
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鶴丸「むかーし、昔。またその昔。旧鼠という歳月を経て妖怪となったねずみがいた。」

鶴丸「ある日、旧鼠は一匹の雌猫と親しくなった。その猫には五匹の子猫が生まれた。」

鶴丸「やがてその親猫が毒にあたって死んでしまうと、旧鼠は残された五匹の子猫を育てたという。」

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太鼓鐘「へ〜ぇ、随分と不思議な話じゃねーの」

宗三「自分達を食らっている種族の繁栄を助けるとは・・・余程の物好きですねぇ、その旧鼠という妖怪は」

江雪「和睦です...」

小夜「復讐・・・育てて食らい返すつもりだったのかもしれないね」

伽羅「・・・生まれてきた子猫に罪はないだろう」


燭台切「それで?どうしたの、鶴さん。急に召集をかけたと思ったら、妖怪の話?」

鶴丸「そう急くな。話はまだ終わっていないぞ?」


鶴丸「旧鼠、人の娘と契りたり。という言葉もあってな。」

太鼓鐘「契る?ねずみが、人間と?」

宗三「急に化け物みが帯びてきましたね」

小夜「ねずみと人間がどうやって契りを結ぶんだろう・・・」


鶴丸「その旧鼠、千年の歳月を経て体の色が白く染まったらしい。」

燭台切「それって、アルビノを見て昔の人が妖怪だと恐れていたんじゃないかな。」

小夜「あるびの・・・僕もその話聞いたよ。白い毛並みのねずみ・・・白・・・」

鶴丸「あー、そのキラキラと輝く瞳には申し訳ないが、期待には答えられんぞ?俺はまっ白だがアルビノじゃない。刀剣男士だ。」

宗三「それにしても、人間の娘と契りを交わしたなど・・・一体どこからそんな噂が。」


鶴丸「さて諸君。この話を聞いて何か思い出さないか?」


伽羅「?」

小夜「何かって?」

鶴丸「旧鼠」

燭台切「あ、もしかして主のことかい?」

鶴丸「ご名答!」

宗三「主?」

太鼓鐘「あ〜・・・そういや旧鼠がどうのって話を顕現した時に聞いたような」

宗三「そうでしたか?」

伽羅「旧鼠の子孫である可能性・・・と言っていた」

小夜「子孫って・・・まさか」

燭台切「え」



鶴丸「さっ本題だ。伽羅坊、きみ、その腰布捲ってみたまえ。」

伽羅「?」

ぺらっ

そこにいたのは・・・小さくて白いねずみ。



本丸に、音にしてお届け出来ないほどの野太い叫び声が響いたのだった。





第01話、旧鼠の子孫





鶴丸「・・・いや、だから悪かった。」

燭台切「本当に反省しているかい?」

鶴丸「してる。いや、ほれ知っているだろう?俺は常に驚きを求めていてだなぁ・・・」

燭台切「危うく、僕らは自ら自分達の主を殺す所だったんだ。」

鶴丸「まさか全員して刀を振り下ろすとは思わないだろう!!!」


太鼓鐘「伽羅が咄嗟に掴んでくれなかったら真っ二つだったなぁ〜・・・生き物好きだったことに感謝だ!」

鶴丸「江雪!きみ、和睦はどうした!!」

江雪「ねずみを逃すと兵糧を狙われます。飢えは不和を呼び、和睦の道が遠退きます・・・」

燭台切「だよね。大所周りでねずみを見掛けたら、全力で退治するよ。なんとしてでも、どんなことをしてでも。」

鶴丸「うむ・・・きみらの発言で、そこの小さき生き物が恐怖で震えているぞ。」

大倶利伽羅の手のひらの中でプルプルと震える小さな塊が、そっと男達を伺うように見つめる。

燭台切「食材は料理担当として死守する構えです。」

江雪「和睦はありえません・・・」

小夜「・・・僕、刀だった頃は、よくねずみを見ていたよ」


燭台切・江雪「「 ・・・ 」」


燭台切「和睦しようか」
江 雪 「和睦しましょう」


鶴丸「その切り替えの早さっ!!」

伽羅「(ホッ...)」

宗三「あなた、この本丸でねずみを見掛けたら飼う気ですね?」

伽羅「・・・」

太鼓鐘「伽羅、ぜーったいに皆反対すると思うぞ?」


燭台切「その、まさかとは思うけど・・・一応聞くね。あり得ないとは思う、でも・・・このねずみって主なの?」

鶴丸「正真正銘、俺たちの主だ。」

小夜「昨日まで人間だと思っていたよ」

太鼓鐘「いや実際人間だった」

宗三「うっ嘘でしょう?僕らの主が、こんな害獣に!?」

鶴丸「俺も半信半疑だったんだが、こう実際目にしてしまうと信じざる得ないだろう・・・」



その時、「キュ」と甲高い鳴き声がした。

太鼓鐘「ん!?なんだ今の!」

燭台切「主の方から聞こえなかった?」

鶴丸「え、ねずみってあんな鳴き声だったのか?」

宗三「チューじゃありませんでしたね」

またキュっと音が聞こえてくる。キュっキュっと、何度か聞こえるも、何が言いたいのかは全く伝わってこない。

小夜「何か言ってるみたいだけど・・・」

宗三「そんなキュっキュっ言われても分かりませんよ」

江雪「なんと言っているのでしょうか・・・」


伽羅「旧鼠の子孫だとは親から聞いていたけど、変身したのは生まれて初めてだと言っている。」


鶴丸「へ?」

キュっキュっ


伽羅「心配をかけてごめんね。審神者業には全く影響出ないみたいだから、安心してねと・・・言っている。」

燭台切「は?」


キュっ

伽羅「いつ戻るか分からないと謝っている。」


太鼓鐘「・・・・・・なぁ、伽羅」

伽羅「ん?」

江雪「主の言葉が分かるのですか・・・?」

伽羅「あんたらには、聞こえないのか?」

小夜「キュしか分からないけど」

伽羅「いつもの主の声も同時に聞こえてくるだろう」

宗三「いいえ」

伽羅「・・・」

宗三「伝わっているのは、あなただけのようですよ?」

伽羅「???」
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